認知症や認知機能障害の疑いを簡易に評価するスクリーニング検査[井門式簡易認知機能スクリーニング検査:ICIS(イシス)]を2013年に開発し、2014年に日本老年医学会雑誌に論文で発表しました。3分程度でできます。現在では、全国各地でご利用いただいております。

認知症は、年齢が上がるにつれて、どんどん発症率が増加します。年のせい、と思っているうちに、実は認知症が徐々に進行しているケースが多くみられます。また、認知症というほどではないけれど、以前より明らかに物忘れが増えてきた、という状況は、認知機能障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)といわれます。この段階で、運動や活動的な生活、生活習慣病の改善などに取り組むと、認知症への進行を遅らせたり、人によっては正常に戻る場合もあります。軽度の認知機能低下に早めに気づくことで、必要な対応にスムーズにつなげることができれば、ご本人やご家族の苦痛を少しでも緩和できるのではないかと思います。井門式簡易認知機能スクリーニング検査(Imon Cognitive Impairment Screening: ICIS)を、認知機能低下の早期発見にどうぞお役立てくださいませ。

方法:検査用紙に従って、順に質問をしてください。
1. 見当識
「今日の日付を教えてください」(年・月・日・曜日) 1つ正答につき1点、計4点
2. 記銘(教示のみ)
「今から言う3つの言葉を覚えてください。後でまた聞きますから、よく覚えておいてください。」
8つの選択肢のうち、1つを選んで出題します。
A.りんご  牛  自動車    B.みかん  豚  飛行機
C.バナナ  馬  電車     D.メロン  犬  バス
E.スイカ  猫  船      F.イチゴ  猿  自転車
G.ブドウ  やぎ  トラック  H.レモン  熊  タクシー

3.手指模倣
A.「私の真似をしてください」と言って、
両手でキツネを作ってみせます。
B.次に、「次はこれです」とハトを作ってみせます。

キツネ
ハト

A キツネ(左右の手) 
最初に作ったもので評価します。
両手ともに正答=1点
片手のみ正答=0.5点
両手ともできない=0点
B ハト
自分の体の方に掌が向いているものを正解とします。
迷わずできた=1点
試行錯誤しながらできた=0.5点
できない=0点
1点か0.5点か迷う場合は、1点としてください。

4.語の流暢性(心の柔軟性)
「‘か’で始まる言葉を、出来るだけたくさん言ってください。ただし、人の名前や固有名詞は除きます。」
制限時間は60秒。最初の5秒間に反応がなかったら、「例えば、紙」とヒントを出します。さらに10秒間黙っていたら、「‘か’で始まる単語なら何でもいいですよ」といって刺激します。同じ単語の繰り返しや変形(傘、傘の柄)、人の名前、固有名詞は正解としません。
10語以上=3点、6~9語=2点、3~5語=1点、2語以下=0点

5.遅延再生
「先ほど覚えてもらった言葉を教えてください」
1つ正答につき1点、計3点
ヒントを与えずに言えたものを正解とします。
6.各項目の得点を合計します。(12点満点)

判定
ICIS 9点以下では、軽度認知障害(MCI)の疑いがあります。
ICIS 7点以下では、認知症の疑いがあります。
(麻痺などで手指模倣ができない場合は、それ以外の項目の10点満点で採点。
その場合、6点以下で認知症の疑い)
認知症の疑いの場合、医療機関で詳しい検査を受けられることをお勧めします。
物忘れや何かが出来なくなったなど、何らかの自覚症状もしくは他覚症状がある場合
ICISの点数が正常範囲でも、専門医療機関の受診をお勧めします。
認知症の診断は早期ほど難しく、また、てんかんなど認知症以外のご病気の場合もあり、治療で治る可能性もあります。何か症状がある場合は、詳しい検査を受けてください。
ICISの点数が正常範囲でも、一般的に年齢とともに認知症の発症率は高まりますので、 半年~1年ごとの定期的な経過観察をお勧めします。
ICISで軽度認知障害(MCI)の疑いとなった場合、急ぐほどではありませんが、一度詳しい検査を受けて症状を評価されることをお勧めします。生活習慣病の改善、定期的な運動や活動的な生活に心がけるなど、認知症予防のために出来ることもありますので、早目に対応し発症や進行を遅らせましょう。
軽度認知障害(MCI)と診断された場合は、進行が心配されますので、必ず半年に1回程度は経過を見られることをお勧めします。
(参考文献:日本老年医学会雑誌 2014;51:356-363, https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/51/4/51_356/_pdf)